2014年以来、12年続いた「オール沖縄の時代」に幕を引いたのは、官僚出身の42歳の新人だった。
現職と新人の争いを制す
現職と新人、計6人の争いとなった県知事選は、自民党など6党が推薦した古謝玄太氏が、現職の玉城デニー氏らを大差で破り初当選した。復帰後生まれの知事が誕生するのは初めてである。
選挙は異例ずくめだった。様相がこれまでとは全く異なっていた。
「県民党」と6党推薦の対決
今回、玉城氏は政党からの推薦を受けず「県民党」を掲げて選挙に臨んだ。辺野古新基地反対を結集軸としたオール沖縄勢力の退潮、衆院選敗北に伴う内部の不協和音が尾を引いていた。
これに対し辺野古移設を容認する古謝氏は自民、維新、国民、参政、保守、公明県本の6党から推薦を得た。県内11市のうち10市長も支援に回った。組織体制が盤石な上に、政策を浸透させる運動量においても、その差は歴然としていた。
経済界や小規模零細業者の中には、玉城県政の8年を「基地ばっかりだ」と批判する声が多かった。経済界にわだかまっていた県政への不満や、「対決より解決」を志向する若い層の声。これらの声を「県政刷新」という一点に集約し、変革のうねりをつくり出したことが大量得票につながったといえる。
玉城氏に吹いた逆風とSNS選挙の課題
序盤から追い風に乗って有利な戦いを進めてきた古謝氏に対し、玉城氏には選挙前から激しい逆風が吹いていた。ワシントン事務所問題や辺野古沖の船転覆事故などで批判にさらされたことは、無党派層の「玉城離れ」を生んだ。
ネット上には、玉城氏個人に対する誹謗中傷や誤情報、偽情報、AIを利用したとみられる差別的動画が氾濫した。本紙の分析(8月1カ月)では、知事選を巡るX(旧ツイッター)投稿の発信地は、沖縄県外が9割を占めた。
基地被害を訴える声に「反日」とレッテルを貼り、「中国の味方」だと決めつける。匿名性に守られ責任を負わない差別的な言論が大量に流れた。誤情報や偽情報が氾濫すると、正確な情報にも疑いの目が向けられ、区別があいまいになる。SNS選挙が持つ危険な側面は以前から指摘されてきたが、徹底した事後検証が必要だ。
新知事が引き継ぐ課題
辺野古新基地建設も自衛隊が進める南西シフトも、明確な争点にはならなかった。だが選挙の結果、これら問題が解消されたわけではない。新しい知事は大きな課題を引き継ぐことになる。
知事選前から県内では安全保障上の必要性が優先され、批判を許さないような空気が広がりつつあった。必要なのは、沖縄の歴史と文化と現実に深く根差した、県民のための政治である。県益に明確に反するものであれば政府に修正を迫る。古謝氏にはそのような県政運営を望みたい。