沖縄知事選で「反日」投稿が拡散 中国交流の歴史と文脈を検証
知事選で「反日」投稿拡散 中国交流の歴史を検証

13日投開票の沖縄県知事選を巡り、中国との交流や「基地反対」の主張に対して、主に県外から「反日」「中国に利用される」という言説がSNS上で飛び交っている。実際の過去の発言などを基にしつつも、当時の状況や前後の文脈などを無視する形の投稿が目立つ。

「中国擁護」はミスリード

「デニー県政が続けば、観光も経済も中国の顔色を伺うようになる」。X(旧ツイッター)上で訴える動画(約380万回表示)では、玉城デニー知事が中国共産党機関紙、人民日報系の「環球時報」のインタビューで、沖縄と中国・福建省との600年以上の交流の歴史を強調したことが取り上げられている。

2023年7月、日本国際貿易促進協会の訪中団の一員として訪中する前のインタビューで、これ自体は事実だ。ただ、沖縄では他県とは違う歴史的な背景から、保革を問わず、歴代知事らが中国と交流をしてきた経緯も踏まえると特異なことではない。

沖縄・琉球には14世紀後半、中国から貿易を目的に多くの福建人が渡来した。琉球に渡って来た「久米三十六姓」は琉球王国の発展に寄与した政治家も輩出した。沖縄県と福建省は1997年に友好県省を締結。中国国家主席の習近平氏も、省長だった2001年に来沖し、当時の稲嶺恵一知事と会談している。

発言の全体像を無視した切り取り

2024年5月、中国が台湾周辺で大規模演習を行った際に、玉城氏が「演習は中国の安全を確保する観点で行われている中国の国内の判断だと思う」と発言したとして、SNSの複数の動画で「中国擁護」と批判されている。

しかし、玉城氏は「中国の国内の判断だと思うが」の後に、「地域の不安定さを招くことがないよう、慎重に行われるべきだ」と述べている。一連の動画は中国に抑制を求めた後半部分の発言を欠落させており、「中国擁護」はミスリードといえる。

尖閣諸島周辺で石垣市議が乗った漁船が中国の公船に追尾された19年5月、玉城氏が「故意に刺激することは控えなければならない」と発言したことも、動画で繰り返し問題視されている。この発言を巡っては当時、石垣市議会で抗議決議が可決された。玉城氏は「中国公船による領海侵入を許容するものではない」と発言を撤回した。

ただ、当初の発言でも冒頭部分で「(尖閣諸島は)我が国の領土、領海」と述べており、尖閣諸島に関する日本政府の認識と一致している。また、現場の海上保安庁の巡視船も「中国公船を挑発しないでください」と漁船に呼びかけていたことを、石垣市議が八重山日報の取材に証言している。

中国の巨大経済圏「一帯一路」構想を巡り、玉城氏が19年に訪中した際、「日本の出入り口として沖縄を活用してほしい」と提案したことも「沖縄を中国の経済圏に差し出すような発言」とSNSで批判されている。しかし、当時は安倍政権も条件付きで協力する意向を示していたという時代背景や、玉城氏がその後に慎重な姿勢に替わっていることに触れておらず、ミスリードだ。

「独立宣言」は誤情報

「基地反対」の主張が中国を利すると訴える動画では、玉城氏が2018年の演説で「日本政府から、アメリカから沖縄を取り戻す」と訴えたことも問題視している。過去にも「独立宣言」とSNSで広まったものだ。

しかし、この発言は普天間飛行場の返還や空域管理権の返還を訴える文脈での言葉で、「独立宣言」は誤情報だ。SNS上に極端な言説があふれ、中国との向き合い方など地域外交の政策論議は深まっていない。