社説:2026年度の最低賃金は全国平均1176円に 継続的引き上げで地域格差是正と生活底上げを掲げよう
社説:最低賃金の継続引き上げで地域格差是正と生活底上げを

2026年度の最低賃金(時給)の目安が決まった。全国平均は現行の1121円から55円(4.9%)引き上げ、1176円とする。引き上げ幅と率がそろって前年度を下回ったのは6年ぶり。現行制度となった2002年以降では、過去2番目の大きさだ。

都道府県を3区分した目安では、東京を含む大都市圏で54円の引き上げとなり、最も高い1226円となる。京都など28道府県と、現行で最も低い沖縄・高知・宮崎(1023円)を含む13県の地方部はいずれも56円の目安だ。この通りに引き上がれば、沖縄など3県と東京の差は2円縮まる。

ただ、東京をはじめとする大都市との格差は依然として大きい。若者の地方からの流出を防ぐためにも、地域間格差を埋める取り組みがさらに必要だ。

沖縄の現状と課題

沖縄県内では中小・零細企業で働く人が9割を占める。最低賃金の引き上げは、働く人の暮らしを支える上で特に重要だ。現在の水準では、1日8時間、週40時間働いても月収は17万6979円、年収212万円にとどまる。最低賃金法が掲げる「労働者の生活の安定」の実現は難しい。

県内では昨年、目安を超える71円の引き上げを行い、初めて千円の大台に乗った。目安の確定を受け、今月から県内でも地方審議会による改定額の議論が本格化する。額の根拠となる「生計費、賃金、支払い能力」の3要素に加え、格差是正の観点からも引き上げの継続が求められる。

政権の経済政策と持続可能な賃上げ

岸田、石破両政権は、新型コロナ禍からの経済立て直しと物価高への対応として、賃上げを起点に所得を増やし、消費と企業収益の拡大につなげる好循環を目指した。一方、高市政権は「強く豊かに」を看板に掲げ、経済政策を大きく転換しようとしている。政府の「骨太方針」には、政府や企業が経済の主役となる姿がにじむ。

高市早苗首相は「賃上げを事業者に丸投げしない」と表明し、最低賃金の全国平均を1500円に引き上げる達成時期を、それまでの「20年代」から「30年代前半」に後ろ倒しした。中小企業の価格転嫁率が50%台前半で伸び悩んでいる状況を考えれば、目標達成に幅を持たせる必要もあるかもしれない。

ただ、日本の最低賃金は国際水準と比べても低い。非正規労働者の7割を女性が占める実態からは、男女の賃金格差是正の観点でも引き上げは急務だ。

安倍政権が2010年代に進めたアベノミクスは、企業収益を高め、賃金や所得に波及させようとしたが、賃上げの停滞を打ち破ることはできなかった。物価の上昇率はひと段落したものの、上昇傾向は続いている。

政府に求められるのは、価格転嫁を進め、生産性の向上を図るなど、持続可能な賃上げに向けた中小企業支援策の強化だ。暮らしを底上げするためにも、引き上げの継続こそが必要である。