海兵隊グアム移転巡る論争、沖縄負担軽減置き去りに
海兵隊グアム移転巡る論争、沖縄負担軽減置き去り

在沖米海兵隊のグアム移転計画を巡り、米軍内部で見直し論が相次ぐ一方、推進論も根強い。しかし、いずれの議論も沖縄の負担軽減ではなく、抑止力や継戦能力の維持に主眼が置かれており、県民の視点が欠けている。

米軍内部で対立する見解

沖縄の第三海兵遠征軍で計画部長を務めたブライアン・カーグ中佐は、米海軍協会の専門誌に寄稿し、沖縄から大規模な兵力を移すことは中国に近い「第一列島線」での抑止力や継戦能力を弱め、「戦略に逆行する」と主張した。また、沖縄の海兵隊をグアムへ移せば、戦闘部隊と補給・後方支援部隊が分離し、燃料や弾薬の供給が脆弱になると指摘する。

さらに、海兵隊トップの総司令官も2025年1月、ワシントンでの会見でグアム移転に疑義を表明し、「信頼できる抑止力は第一列島線に存在しなければならない」と訴えた。

一方、2005年の米軍再編協議を担当したリチャード・ローレス元国防副次官は、同じ専門誌で、中国や北朝鮮の弾道ミサイルの射程内にある沖縄に約1万8千人の海兵隊員を置き続けることは「相手側に西太平洋の海兵隊を機能不全に陥らせる機会を与える」と反論。沖縄からグアムへの分散の意義を強調した。

移転の歴史と現状

日米両政府は2006年、グアム移転を含む在日米軍再編計画に合意。再調整を経て2012年には、約9千人の海兵隊員と家族を国外へ移し分散することで抑止力を維持しつつ沖縄の負担を軽減する構想が示された。しかし、実際の移転が始まったのは合意から18年後の2024年12月で、後方支援要員約100人のみにとどまる。日米両政府は現在も移転計画を維持するが、沖縄駐留を継続する部隊改編も進められており、計画の形骸化が懸念される。

海兵隊は中国を念頭に、小規模部隊を島しょ部に分散展開する新戦略「遠征前方基地作戦(EABO)」を掲げ、最新の地対艦ミサイルシステム「ネメシス」などの配備を進めている。

県民軽視の議論に警鐘

一方、今年3月に米国家情報長官室が公表した年次報告書は、中国指導部が2027年までに台湾侵攻を実行する計画を立てておらず、上陸を伴う侵攻は極めて困難と認識し、武力衝突を避ける形の統一を優先させていると分析した。

こうした中、投票者の約9割が米軍基地の整理・縮小を求めた1996年の県民投票から30年が経過した。しかし、基地の返還は一部にとどまり、先島への自衛隊基地やミサイル部隊配備などの「南西シフト」は進む。さらに、民間空港や港湾の軍事利用も進められようとしている。

米軍の戦略論争に沖縄の負担軽減を置き去りにしてはならない。日中の対話を復活させ、軍拡競争からの転換を図るべきだ。