世界的ベストセラーとなった『人新世の「資本論」』の著者で、経済思想家の斎藤幸平氏は、県知事選で古謝玄太氏が当選し12年ぶりに県政が交代したことについて、県民が「変わらない状況の中で変化を求めた」結果だと指摘した。斎藤氏は、気候危機が民主主義に及ぼす影響を論じた新著『人新世の「黙示録」』を刊行したばかりで、世界で進む政治の変化や日本の行方、沖縄の今後について語った。
気候危機が民主主義を揺るがす
斎藤氏は、リベラル民主主義はそれなりに安定した自然環境の下で発展してきたとし、「気候変動が進み、食料や水が不足して自己保存そのものが脅かされるようになれば、正義や平等といった価値が宙づりになってしまう」と警鐘を鳴らす。人々が生存や利益を優先するようになれば、外国人やマイノリティー、女性などの権利が後回しにされ、排外主義や弱者を切り捨てる動きが広がると述べた。
「米国もそうだし、ドイツでもそうした動きが強まっている」とし、将来への不安とともに「自分たちはこれまで見捨てられてきた」という感覚が、政治を変えようという動きにつながっていると分析。「気候危機は単なる環境問題ではない。民主主義を支えてきた土台そのものを揺るがす問題だ」と強調した。
日本は10年、15年遅れている
日本の状況について斎藤氏は「ドイツや米国に比べれば、まだそこまでではない」としながらも、「米国などの政治を見ていると、日本は常に10年、15年ぐらい遅れている感じがする」と指摘。ドイツや米国の動向が日本の将来の傾向を示すと述べた。
その上で、日本はこれまでポピュリズムに比較的強く、自民党が左的なものも右的なものも取り込む力を持っていたことが大きいとしつつ、「欧米で起きている変化を日本だけが免れるとは限らない」と警鐘を鳴らした。
沖縄の知事選が示すもの
沖縄県知事選で現職の玉城デニー氏が敗れ、古謝玄太氏が初当選したことについて、斎藤氏は「人々は、変わらない状況の中で変化を求める」と解説。「自分たちの声が政治に十分反映されず、見捨てられていると感じれば『このままでは駄目だ』『何かを変えなければならない』という思いが強くなる」と述べた。
沖縄は特に「自分たちの声が反映されていないという感覚が強い地域」だとし、基地問題を巡ってさまざまな形で意思を示しても状況が変わらなかった中で、「知事が代われば少しは変わるのではないか」という期待が今回の結果につながったとの見方を示した。