沖縄科学技術大学院大学(OIST)や琉球大学、沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)などの学生らでつくるチーム「iGEM OKINAWA」は、11月にフランス・パリで開催される合成生物学の国際大会「iGEM」に向け、準備を進めている。
豚赤痢に挑む
チームは、豚の消化器疾患などの原因となる病原菌を標的に、抗生物質に代わる治療法として、酸性環境に耐えるバクテリオファージの開発を目指している。出場は昨年に続き2回目。
チームは、合成生物学の知見を生かし、沖縄の地域課題の解決に取り組んでいる。農業者や畜産関係者への聞き取りを通じ、脱水や血便などを引き起こす細菌感染症「豚赤痢」が養豚現場の課題となっていることを把握した。
チームによると、豚赤痢には有効なワクチンがなく、感染予防のために抗生物質が長期間にわたり投与されるケースがあるという。抗生物質の使用は耐性菌の出現や生産コストの上昇につながる恐れがあるため、抗生物質に代わる感染症対策の開発を目指す。
酸性環境に耐えるファージ
バクテリオファージは、特定の細菌に感染して死滅させるウイルス。抗生物質に代わる治療法として期待される一方で、酸に弱く、口から投与すると胃酸で失活することが課題となる。チームは、人工知能(AI)を活用して遺伝子情報を設計し、酸性環境でも働くファージの開発を目指している。実用化できれば、豚の感染症対策に加え、人間の胃がんなどの原因となるピロリ菌の治療への応用も期待できるという。
チームは現在、酸耐性を高めるための遺伝子設計を支援する独自のAIプラットフォームを開発している。遺伝子をどう変化すれば耐性が高まるかを予測する。今後、設計したファージの効果や安定性を実験で検証する。
学生たちの思い
沖縄高専生物資源工学科の石垣幹人さん(19)は、コンピューター上で研究を進める「ドライチーム」としてAIの開発に携わってきた。「最近発展している最先端の分野に触れることができ、いい経験になった」と話した。
名古屋大学農学部出身で、OIST海洋生態進化発生生物学ユニット博士課程2年の関夏菜子さんは「農家の皆さんを楽にしたいという気持ちがずっとあった。農家や獣医師から『こうした薬があったらいいのに』と言われ、喜んでもらいたいという思いで取り組んでいる」と語った。
チームリーダーで、OIST細胞増殖・遺伝子編集ユニット博士課程4年のイ・ジュンホさんは、昨年に続く出場を前に「沖縄にはいろいろな学生がいて、それぞれの知見を持っている。その力を集めれば、沖縄からすごいものができる」と力を込めた。
支援を呼びかけ
チームは大会登録費や渡航費など、大会出場に1960万円が必要で支援を呼びかけている。問い合わせは、チームリーダーのイさん、メールjunho.lee@oist.jp。