浦添市伊祖の「沖縄空手道小林流大信館協会本部道場」では、4~85歳の門下生が日々鍛錬に励んでいる。道場主の大城信子館長は79歳で、沖縄初の女性道場主となり、女性では沖縄唯一の範士九段。現在も伝統空手の後進育成に力を注いでいる。
道場破り撃退、沖縄初の女性道場主に
大城館長は1975年、琉球舞踊の勉強を兼ねて空手を始めた。小林流の開祖・知花朝信氏を師に持つ比嘉佑直氏の門弟として、並みいる空手家たちと厳しい鍛錬に打ち込んだ。会社勤めをしながら93年には浦添に道場を構え、「女に道場ができるのか」との冷ややかな視線をよそに、一時は道場に入りきらず近くの公園で稽古するほど多くの門下生を抱えた。
「佑直先生の『ガマク、チンクチ、ムチミ』を使った型を守り、伝えている。道場破りの男が二度来たが、厳しい稽古に耐えられず逃げ帰った」と笑う。
空手は教育、居場所づくりにも
小林流は自然呼吸や遠い間合いを想定した型を特徴とする。道場では礼節を重んじ、緊張感を持って心と技を磨く。「空手は教育」と話す大城館長の指導は厳しくも優しく、愛情にあふれ、保護者らの信頼も厚い。「強くなれば人を思いやる心を持てる。人間性を養ってほしい」と熱を込める。
県外の師範クラスや海外から教えを乞いに訪れる人も多い。60歳以上の門下生が集うシニアクラスは、空手を通したコミュニティーや居場所づくりになっている。
腕立て伏せ沖縄No.1、豪快エピソードの数々
「なんでも一番にならないと気が済まない」と妥協を嫌う大城館長は、琉舞で最高賞を受賞し、珠算では沖縄代表に選ばれたこともある。かつてテレビ番組「筋肉番付」に出演し、屈強な男性陣に交じって腕立て伏せ勝負を行い、沖縄一に輝いた。信号待ちの車内で拳を鍛えるためにドアをたたき続け内側をボコボコに破壊したなど逸話は絶えない。
シングルマザーとして、子育てしながら空手に精を出してきた。門下生の女性は「先生は1人でなく4人いるのではないかと思うほど、多才すぎる。憧れの存在」と羨望のまなざしを向ける。
メジャーリーガーも空手? 元気の秘訣は…
最近、メジャーリーグ観戦にはまる大城館長は、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手の大ファン。「大谷選手は脇腹から下腹部周りの筋肉『ガマク』を入れるのがうまい。フレディ・フリーマン選手の打撃スタンスは、親指を内に入れる「ナイファンチ型」の時が調子がいい」などと解析し、下半身の重心移動など、野球と空手の型に共通点を見いだして楽しんでいる。
範士十段へのさらなる高みを志す大城館長は「女性の空手家を増やし、世界中から集めて大会を開きたい。車いすでもできる型を作ってみたい。大好きなカチャーシーをもっと踊りたい」と抱負は山積み。「元気の秘訣はよく食べること」と稽古後には、ひそかに冷えたコーラを楽しんでいる。