大阪公立大学、どうぶつたちの病院沖縄、国立環境研究所、沖縄美ら島財団で構成する研究グループは15日、国指定天然記念物のヤンバルクイナについて、凍結精子を使った人工授精に初めて成功したと発表した。研究成果は同日、国際的な学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
新技術で凍結保存した精子を使用
人工授精には、新たに開発した技術で凍結保存した精子を使用した。誕生した有精卵はふ化直前まで胚が発生したものの、ひながくちばしでうまく卵殻を破れず、ふ化には至らなかった。
新たな精子の凍結保存技術は、他の鳥類の人工繁殖にも応用できるという。研究グループは、絶滅の恐れがある国内外の鳥類の個体数増加や種の保存に貢献できると期待を寄せている。
凍結保護物質の課題を克服
凍結保存する液体に含まれる、細胞などを氷の結晶から守る「凍結保護物質」は、人工授精の成功率を下げる要因となる。従来の方法では人工授精前にこの物質を取り除く必要があるが、その作業が精子の数や運動性の低下を招く懸念があった。
新技術では、水や細胞となじみやすい新しい凍結保護物質を使用し、物質を除去せずに人工授精ができるようになった。解凍後の精子には十分な受精能力が確認された。
研究グループのコメントと今後の展望
研究に携わった大阪公立大学大学院の金子武人教授と中川優貴研究員は「毎年失敗の連続だったが、多くの関係者の熱意による試行錯誤の末、凍結精子からの人工授精による待望の有精卵が得られた」とコメントを発表した。
ヤンバルクイナは2006年に国内で初めて完全人工ふ化に成功。2019年には、凍結していない新鮮な精子を使った人工授精で世界初のヒナが誕生している。可能な限り多様な遺伝子を保存することを目指し、2014年から精子の凍結保存や人工授精の技術開発が始まった。