那覇市の旭橋交差点にあった東町会館内のギャラリーで、石川文洋さんの「戦争と平和写真展」が開かれていた。就職活動で帰省した大学3年生の夏のことだった。卒業が迫り、周囲の流れに合わせてやむなく始めた就職活動。業界研究をするうち、現場が毎日変わる新聞記者の仕事に惹かれ、どこでも自由に行けて楽しそうだと興味が湧いた。
ベトナムの戦場を撮り続ける
石川文洋さんはベトナム報道で著名なカメラマンで、学生にも超有名だった。書店で『戦場カメラマン』と『報道カメラマン』を購入した。両著とも文庫本でコンパクトだが、1冊約1000ページ。辞書のように厚く、鬼気迫る写真に加え、ベトナムの戦場をはじめ国内外で出会った市井の人々やその暮らしが伝わる写真が多く掲載されている。写真だけでなく、戦場の緊張感が続く体験を文字でも丹念に綴っており、読み応えあるルポルタージュでもあった。
写真展会場に入ると、入り口の長テーブルの受け付けに文洋さんが1人座っていた。まさか本人がいるとは思わず、一気に緊張したことは今でも覚えている。展示された凄惨な戦場の写真に圧倒されたが、対照的に文洋さんはニコニコと柔和な表情で声をかけてくれた。シリーズ写真集の中から『ベトナム報道35年』を選んで買うと、直筆でサインし、「ベトナムの熱き青春の日々」というメッセージを書いてくれた。
「戦争は人間の力で防げる」
石川文洋さんはベトナム戦争の戦場を撮り続け、「戦争は人間の力で防げる」と語っていた。その言葉には、戦場で見た現実への強い思いが込められている。
「感動は人生の財産」
また、石川さんは「感動は人生の財産」という言葉を残している。写真を通じて伝えたかったのは、戦争の悲惨さだけでなく、人々の暮らしや命の尊さだった。
石川文洋さんは2017年1月24日、長野県諏訪市の自宅で撮影された写真に写っている。その姿は、柔和な笑顔を浮かべ、語り続けたカメラマンとしての人生を象徴している。