企業への不正アクセスによる個人情報漏えいが相次いでいる。とりわけ9月ごろからは目に見えて増え、デジタル社会に潜むリスクがあらわになった。
県内でも展開するカーシェアリングサービス「タイムズカー」では、最大660万件の個人情報が流出した。深刻なのは、本人確認に用いられる運転免許証の画像データまで含まれている点だ。悪用されれば、第三者によるローン契約やクレジットカードの不正発行などが行われかねない。
企業の責任とデータ管理の課題
個人情報保護法は、利用する必要がなくなったデータを消去するよう事業者に努力義務を定めている。タイムズカーの場合、退会者のデータまで長期間保有されていたのは納得しかねる。損害賠償を求めて集団訴訟する動きもあり、企業側の責任は重い。
狙われているのは民間企業にとどまらない。デジタル庁は先月、政府のネットワークが不正アクセスを受け、省庁職員らの個人情報が大量に流出した可能性を明らかにした。今年4月には沖縄総合事務局でも同様の攻撃が確認されている。
被害急増の背景と対策の徹底
民間調査によると、国内の企業や自治体が今年公表した被害件数は9月末時点で600件となり、過去最多ペースで推移している。「地方だから」「自社は大丈夫」という甘い思い込みは通用しない。電力や交通、医療といった重要インフラが停止すれば、国民生活や地域経済に甚大な支障が生じる。
被害が急増している背景には、AIの進化と普及がある。高度な専門知識がなくても攻撃用プログラムを作成できるようになり、サイバー攻撃のハードルは劇的に下がった。広範な業種へ手当たり次第に攻撃が仕掛けられ、システムの弱点が狙われている。
企業や官公庁も防衛を進めるが、巧妙化する手口に追いつかない。内閣官房国家サイバー統括室は先週、企業へセキュリティー強化を求める緊急文書を公表した。定期的な脆弱性診断や業務委託先を含めた安全確保といった対策の徹底をはじめ、データそのものの適切な管理を促す。
個人レベルでの防衛と社会全体の連携
どのような情報を、いつまで保存するかを明確にし、不要になったデータは速やかに廃棄する。「侵入を完全に防ぐことはできない」との前提に立ち、保有情報の最小化を進める時代に入っている。
流出した個人情報は、インターネットの闇サイトで売買されることがある。「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」に流れれば、不正な口座開設や携帯電話の契約、受け子・出し子の身元偽装などに利用されかねない。
こうした脅威に対し、個人レベルでも防衛の意識を高める必要がある。パスワードの使い回しを止め、本人確認を厳格にする2段階認証を設定する。企業や金融機関を装った不審な電話やメールにも注意を払わねばならない。官民が連携し、社会全体で危機意識を強めたい。