那覇市長選は25日に投開票され、無所属現職の知念覚氏(63)が再選を果たした。与野党相乗りの支援を得て、盤石な体制を示した形だ。
市民生活の安定が急務
那覇市の物価上昇は全国でも高い水準にあり、人工知能(AI)の急速な進化や悪用によるデジタル社会の混乱など、個人、企業ともに不安が広がっている。市民生活の安定は急務であり、那覇市は県都として沖縄経済全体のけん引役が求められる立場でもある。知念氏は広範な支持を生かし、不安に寄り添いながら先駆的な改革に果敢に挑むことが期待される。
一方で、強力な対抗馬がなく実質的な信任投票の様相となり、選挙戦が低調だったことは否めない。投票率は35.81%と前回(47.05%)を下回り、2018年市長選から3回連続で5割を切った。
投票率低下と市政の課題
市民の政治参加や行政への関心が低下すれば、那覇市が掲げる「協働によるまちづくり」にも支障を来す。投票率の低下傾向も市政の課題の一つであり、知念氏にはより一層の市民との対話が求められる。
9月の県知事選では、厳しい生活実感の中で暮らし支援や経済政策が有権者の関心だったことが示された。前副市長の古謝玄太氏が県政交代を果たし、続く那覇市長選で知念氏再選への流れを手堅くしたと言えよう。基地跡地利用に向けて経済界が主導する「GW2050プロジェクツ」などで県と那覇市の連携が円滑になり、経済を前に動かす期待感を醸成した。
さらに古謝氏が知事選で支援を得た政党の枠組みよりも、知念氏は一部野党を取り込んでウイングの幅をより広げたという特徴がある。4年前に推薦を得た自民、公明だけでなく、政権与党の維新、国政野党の立憲、国民、県政野党の社大も知念氏に推薦を出し、次点の久手堅幸子氏(74)=共産、社民推薦=らに大差を付けた。
生活重視の路線が支持拡大
知念氏は翁長雄志市長、城間幹子市長と続いた市政の後継として、1期目では小中学校給食費無償化、子ども医療費助成、学びクーポンの中学生までの拡大などを進めた。産業・雇用の安定に基づいて子育て支援、福祉の充実を図るという生活重視の路線が、党派を超えて支持を得る形になったのだろう。
これに対し告示直前に立候補を決めた久手堅氏は、国が進める沖縄の軍事拠点化を止める姿勢を前面に、那覇空港の民間専用化、那覇軍港の無条件撤去などを掲げた。ただ、基地や安全保障以外の那覇市の課題で争点が広がらず、野党勢力の分散で広がりを欠いた。
論戦は深まらなかったとはいえ、都心の空洞化と既存市街地の高齢化、地価上昇による住居・生活費の負担増、インフラの老朽化、独居世帯の見守り、治安対策など、那覇市は今後、人口減少局面で起きるさまざまな都市問題に直面していく。
市議会与党勢力の広がりに甘んじて緊張感を欠き、行政の停滞を招いてはならない。公約の実現を加速させ、市民の負託に応えてもらいたい。