沖縄唯一の在来種茶園をつなぐため、うるま市石川山城の「TETTOH TEA FACTORY」がやまぐすく茶の再生に取り組んでいる。旧石川市の特産品だったやまぐすく茶を復活させ、地域の味を提供する代表の石川智史さんに話を聞いた。
やまぐすく茶との出合い
石川さんは静岡県出身で、25年前に沖縄へ移住し、うるま市で鉄塔がシンボルのコーヒー専門店「TETTOH COFFEE」を経営している。2020年、同市の山城地区で鉄塔のそばに建つ小屋に目をつけ、「テットウコーヒーの2号店にピッタリな場所だ」と建物の所有者を探し、山城自治会にたどりついた。
公民館で山城地域の茶業についてまとめられた資料を紹介され、やまぐすく茶の歴史や、担い手がいなくなったことを知ったという。石川さんは「このお茶を途絶えさせたままなのは、もったいないのではないか」と考え、「復興するなら最後までやり抜こう」との覚悟を持ち、自治会に復興活動を申し入れた。
やまぐすく茶は、うるま市山城地域で戦前から栽培されてきた、種から育つ在来種茶を指す。一般的な挿し木栽培の「品種茶」に対し、やまぐすく茶は古来より種から育てられた貴重な在来種のチャノキだ。
戦前から続く茶業の歴史
1935年、やまぐすく茶は台湾と静岡県から持ち込まれた茶の種を旧美里村山城地域で栽培したことから始まった。当時の農林省から出向した茶業の専門家・小山松美さんが山城の茶業をリードし、1937年には製茶工場も造成。戦中に分解し避難させていた機械を再び組み立てるなど、戦後の茶業復興にも力を入れた。
地域一帯の地場産業となったやまぐすく茶は、1997年には特産品に指定されるほど盛り上がりを見せた。しかし、農家の高齢化や製茶工場の機械の故障などにより、2010年代から担い手が途絶えたという。
再生への道と循環型農法
再生は前途多難だった。紹介された土地は耕作放棄地で、土地などの権利問題により新たに茶の種をまくことや収益化ができず、ボランティアとして畑を管理することに。石川さんは「ジャングル状態になった畑の中から、残っていたチャノキを助け出しました。まさか作物が見えないほどだったとは」と当時を振り返る。
ボランティアを続けて4年がたった頃、公的機関を通すことにより土地の問題が解決。やまぐすく茶も少しずつ収量を確保できるようになり、テットウティーファクトリーを設立した。
同店で提供するやまぐすく茶は、かつて緑茶で提供された茶葉を発酵させ紅茶としてアレンジしたもの。甘みがあり、品種茶にはない複雑で奥深い味わいが楽しめる。育てた鶏のフンを堆肥化したり、植栽するソウシジュの緑肥を使うのが特徴で、山城地域の風土を100%活用した無農薬・無肥料の循環型農法を採用している。
石川さんは「やまぐすく茶は地域の人のみならずいろんな人を巻き込んでつながれた『平和の象徴』とも呼ばれるお茶です。移住して四半世紀、お世話になった沖縄に恩返しできるチャンスが回ってきたのかなと思っています」と力を込める。